「北極域研究船」の建造決定にあたって
 北極環境研究コンソーシアム(JCAR)では、北極研究及び海洋研究の進展のため我が国として砕氷研究船を保有・運用する必要性を強く認識し、二度にわたって国に北極域研究船の建造に係る要望書を提出するとともに(一度目二度目)、JCAR内に「北極研究船利用計画ワーキンググループ」を設置し、就航後10年程度を見据えた具体的な利用計画と5年程度の観測計画を検討し公表するなど、本船の建造実現に向けて積極的に活動してきた 。令和2年12月21日に決定された令和3年度予算案において北極域研究船の建造が措置されたことを踏まえ、JCARとしてこれを歓迎するとともに、文部科学省はじめ多くの関係者に深く敬意と謝意を表するものである。今後は関連学協会とも協力しつつ、本船の建造と運用にあたる国立研究開発法人海洋研究開発機構との連携を一層強化していく所存である。
 北極域研究船は、世界有数の砕氷機能を備えた研究船であり、我が国の厳しい財政状況に鑑みれば、建造費、運用費ともに安価とは言えない費用を要する。他方、文部科学省「北極域研究船の利活用方策・費用対効果等に関する有識者検討会報告書」(令和2年12月公表) において報告されているとおり、本船は、異常気象・気候変動、海運・運航支援、漁業水産、生物資源利用等の様々な分野において国際社会のみならず我が国の利益に貢献し得る潜在性を有しており、本船の運用が想定される30年間という視点に立てば、学術的・社会的・国際的貢献とともに利益が投資を大きく上回るという試算結果が示されている。JCARは我が国を代表する北極研究コミュニティとして、その潜在性を遺憾なく発揮できるよう、研究提案や社会貢献の提言を通して、最大限努力してまいりたい。
 これまで北極域研究船に係る要望書や利用計画等で述べてきたとおり、北極域は、急激な環境変化と経済活動の活発化への対応の両立といった困難な課題に直面している。また、北極域の環境変化は我が国の気候・気象にも大きく影響を及ぼすなど、北極域が抱える課題は地球規模のグローバルな視点でとらえる必要がある。我が国は、北極域に隣接しその影響を受ける国として、さらには世界のリーダーを目指して、これまで培ってきた北極域研究の実績を大いに活用し、さらに発展させていくことによって、北極域が抱えている諸課題の解決に科学的根拠をもって貢献していくことが責務となる。北極域研究船による研究活動を通じて、「北極域の包括的な科学的理解と地球規模の環境変動への影響把握」において世界をリードすることを目指すべきである。
 北極域研究船は、「我が国の北極政策」(平成27年10月総合海洋政策本部)において国際プラットフォームとして位置づけられており、最先端の観測設備を備えるのみならず、ユニバーサルデザインなど生活環境にも十分に配慮し、様々な国の、様々な分野の研究者が乗船し、垣根なく平和的に研究活動に邁進できるような研究船を実現すべきである。JCARとしても、そのために必要な役割を果たしていくことをここに表明する。
令和3年1月15日
北極環境研究コンソーシアム